北欧のクリスマスJuleの小人”ニッセ(Nisse)”、あるいは”トムテ(Tomte)”
北欧圏のクリスマス(ユール:Jule)には必ず登場するサンタクロースに似た小人。
目深に被った三角帽から丸い鼻を覗かせ、白く長い髭を蓄えた三頭身ほどのこの妖精はデンマークやノルウェーではニッセ(Nisse)と呼ばれる存在です。ちなみに同一の存在はスウェーデンではトムテ(Tomte)と呼ばれます。

その可愛らしい見た目のため、最近は日本でも人気が出てきているようで、クリスマスシーズンになるとお店のクリスマス飾りのコーナーにサンタクロースに混じってこっそり並んでいるのを見かけることも多くなりました。
ただし、その人気とは裏腹にこのニッセがそもそもどのような存在なのかということはあまり知られていない様子。ですので、今回はノルウェー内におけるそのあたりのお話を少し…。
サンタとは別物?ニッセとは何
さて、早速ですが、ニッセとはどんな存在なのかご存知でしょうか?
以前、北欧圏とは縁もゆかりもない知人とともにあるお店でニッセの人形を見かけた際に、”あ、ニッセだ。知ってる?”と尋ねたところ、”サンタのデフォルメか、サンタの手伝いをする妖精だと思ってた”というような回答を受けました。
この知人のように、ニッセのことをサンタクロースと混同している人は少なからずおられるようですね。ニッセに限らず、北欧文化は最近になって日本で人気が出てきていますが、それらが輸入される際にその概念についてはあまりしっかりと説明がされていないように思いますので仕方ないことですね。

それでは、びっくりする事実から。
実はニッセはサンタクロースとは全くの別物で、そもそもは両者の間には名前の類似(後述)以外にはなんの関連性もありません。サンタクロースはキリスト教文化のもの(聖ニコラウス)ですが、ニッセの存在は北欧の民間伝承にその起源があります。
今でこそ、ニッセは北欧圏においてクリスマスのマスコットのような存在になっていますが、元々は”農場を守る小人、あるいは妖精”のような存在です。特にノルウェーの伝統ではニッセはGradvordenというヴェット族(北欧神話にも登場する超自然的存在)とされているそうです。
ニッセってどういう存在?
上記の通りニッセは、農場や土地に冠する北欧圏の民間伝承のお話に由来します。その姿は18,19世紀頃の伝統的な農夫の服装を纏っていて、小柄な髭を生やした老人とされることが多いです。基本的には人間に比べて非常に小さく、背丈は数センチから小動物ほどの大きさまでとのことです。
そのためか、クリスマスの飾りとして売られているニッセのぬいぐるみもさまざまな大きさのものが見つかります。

ちなみに昔のノルウェーの農夫は赤い帽子をかぶっていたそうで、ぬいぐるみも赤い帽子のものが多い印象です。もちろんサンタクロースと結びついたことから、サンタクロースを連想させる赤い色が使われがちということもあるのかもしれません。
ニッセは人間の”隣人”とも呼べるような存在で、農場の納屋や離れに住み、農場を見守り動物たちの世話をしてくれるのだとされます。しかし、ただただ人に都合の良い存在というわけではなく、気難しい一面も持っていて、扱いが悪いと感じると人や家畜に危害を加えると信じられています。
そのため、クリスマスイブにはニッセのために Risgrøt と呼ばれるミルク粥を用意する伝統がノルウェーにはあります。

ちなみに日本でもその昔アニメ化されたスウェーデンのノーベル文学賞作家Selma Lagerlöfによる『ニルスのふしぎな旅』でイタズラ好きな主人公ニルスを小人に変えてしまった妖精はトムテ(ニッセ)とされています。私はアニメは見たことはありませんが、小学生の頃に偕成社文庫の翻訳本を読みました。
ちなみに余談ですが、主人公ニルスのスウェーデン表記はNilsで、この名前の愛称もNisseだそうです。
ニッセとサンタクロース
ニッセは元々クリスマスとは無関係な存在と書きましたが、では何故現代においてはニッセがクリスマスのマスコットのようになっているのでしょうか?
実はサンタクロースとニッセには一つだけ意外な共通点があります。それが上でも少し触れた”名前”です。逆にいうとそれ以外には両者には一切接点はありません。
サンタクロースは聖ニコラウスに由来することは有名な話ですね。実は北欧圏でもNikolausあるいはNikolasという名前はよくある男性の名前で、その愛称(短縮系)は”Nisse”となります。
なので、サンタクロースもニッセ、ニッセはニッセということで、直接的にはわかりにくいですが、両者の呼び名は一緒ということなのです。実際、ノルウェーではサンタクロースも Nisse(Julenisse)と呼ばれています。

元々、農場の小人、妖精であったニッセは、19世紀末にヨーロッパから入ってきたサンタクロース(ニッセ)という同じ名前の存在と融合することで、現在のノルウェーのクリスマスのニッセという存在になった(認識されるようになった)のだとされています。
また20世紀初頭からクリスマスカードを送る習慣が広まったことで、カードに描かれたこのニッセが描かれるようになって、ノルウェー全土にその存在が浸透して行ったのだとか…。さらに、近年ではヨーロッパのサンタクロースの特徴である赤い帽子に白いひげなどの要素がより取り入れられているようです。
日本で売られているニッセ(トムテ)の人形も赤い帽子に赤い服、白い髭を蓄えたサンタクロースに近いデザインのものがよく見かけるように思います。
ノルウェーでは、赤い帽子の物だけではなく、真っ白な衣装のものなどいくつかのバリエーションがあります。
ノルウェーのニッセとスウェーデンのトムテ
さて、ノルウェーのニッセについて少し詳しく説明してきましたが、最初に書いたようにスウェーデンでは同様の存在のことをトムテと呼びます。これらは完全に同じ存在で、純粋に呼び方の違いなのだそうです。

実はこの存在は他にも色々な名称があり、”tuft”、”tuftekall”、”gardsbonde”、”godbonde”、”haugebonde”、”gardrud”、”rudkall”、”rundbonde”や、”fjøsnissen”、”skipsnisse”、”kirkenissi”などと呼ばれるのだそうです。
ノルウェーでニッセの人形を買いたいなら
ノルウェーのクリスマスでは必ずと言っていいほど登場するニッセ。可愛らしい見た目もあって購入したいと思っている人も多いのでは無いでしょうか。
ノルウェー文化の中でも有名な部類に属するニッセですが、実はあまり観光客向けのお土産屋さん(WAY NOR など)では見かけることはありません。これはなかなか意外なことでした。サンタクロースなど他のクリスマス飾りは売られているのですがね。
私の母もニッセが大好きで、年末に帰国・帰省する際にはニッセの人形をお土産に購入して帰るのですが、少なくともトロムソのお土産屋さんやオスロの中心街のお土産屋さんではほとんどニッセのクリスマス飾りは見つけられませんでした。
では、どこで手に入るのかというと、クリスマスマーケットや雑貨屋さん、そして玩具屋さんなど、そして意外なことに一番見つけやすいのはスーパーマーケットだったりします。
ノルウェーでは11月に入ると街やお店が徐々にクリスマス色に染まり始めます。スーパーでもクリスマス用品を集めた特設スペースが目立つ場所に設けられて、大小様々なニッセの人形がクリスマス飾りと共に並べられているのが見つかるはずです。
最近はスーパーはセルフレジのところがほとんどなので、英語、ノルウェー語が苦手な人も気持ち楽に購入できるはず。ちなみにスーパーだからと言って質が低いということはなく、可愛らしい人形はたくさんあります。ただし、日本ほどお店の商品管理はしっかりしていないので、壊れていたりする不良品もたまに見かけるのでご注意ください。
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